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EVIDENCE / からだの常識
からだの常識の研究まとめ
からだの常識について、研究でわかったことを7本、元の論文の出典つきでまとめています。わかったことだけでなく、研究の限界や「まだわからないこと」も書いています。
メタ分析
ストレッチしておけば筋肉痛にならない?
よく聞く説
運動の前後にしっかり伸ばしておけば、翌日の筋肉痛が軽くなる。部活や体育でそう教わった人、多いよね。
調べた人
12の実験をまとめて見直した
医療研究をまとめるコクランのレビューで、運動の前か後にストレッチをして筋肉痛を測った12の研究を集めた。うち1つは2,377人が参加した大きな研究だった。
ほんとのところ
100点満点で、1点くらいしか変わらない
痛みを100点満点にそろえると、運動前のストレッチで翌日の痛みは平均約0.5点、運動後で約1点減っただけ。大きな研究でも約4点。体感できる差ではない、という結論だった。
まだわからないこと
ストレッチが無意味、という話ではない
調べたのは健康な大人の筋肉痛だけ。けがの予防や体のやわらかさは別の話。研究の多くは小さく、証拠の質は低〜中程度とされている。
出典: Herbert et al., "Stretching to prevent or reduce muscle soreness after exercise" (Cochrane Database of Systematic Reviews, 2011)
メタ分析
甘いものを食べると子どもがはしゃぐ?
よく聞く説
お菓子を食べた子どもが急にテンション高くなる。誕生会のあとなんかに「砂糖のせいだ」って言いたくなるよね。
調べた人
本物の砂糖と人工甘味料をこっそり比べた
アメリカのヴァンダービルト大学などのチームが、16本の報告(23の研究)をまとめた。どれも、子ども・親・研究者の誰もどちらを食べたか知らない状態で比べた研究だ。
ほんとのところ
行動にも成績にも、はっきりした差は出なかった
行動や学習など14の項目を調べたけど、どれも砂糖の影響があるとは言えなかった。親が強く信じているのは、思い込みや、よくある連想のせいかも、と著者たちは書いている。
まだわからないこと
小さな影響や、一部の子はわからない
著者たち自身、ごく小さな影響や、一部の子だけに出る影響までは否定できないとしている。1995年のまとめで、その後の食生活の変化までは追えていない。
出典: Wolraich et al., "The Effect of Sugar on Behavior or Cognition in Children" (JAMA, 1995)
観察研究
指をポキポキ鳴らすと、関節が悪くなる?
よく聞く説
「指を鳴らすと関節が悪くなるよ」って注意されたこと、あるよね。年をとってから手の関節が傷むと言われてきた。
調べた人
50〜89歳の手のレントゲンを見比べた
アメリカの家庭医のチームが、手のレントゲンをとった50〜89歳の215人に、指を鳴らす習慣を聞いた。手の関節が傷む病気(変形性関節症)がある人135人とない人80人を比べた。
ほんとのところ
鳴らす人と鳴らさない人で、ほぼ同じ
関節の傷みがあった割合は、鳴らす人で18.1%、鳴らさない人で21.5%。差ははっきりしなかった。何年鳴らしてきたか、1日何回かを見ても関係は出なかった。
まだわからないこと
昔の習慣を思い出して答えた研究
過去の習慣を本人の記憶で答えてもらう調査で、人数も215人と多くない。指を鳴らすと関節にいい、という話でもない。
出典: deWeber et al., "Knuckle Cracking and Hand Osteoarthritis" (The Journal of the American Board of Family Medicine, 2011)
実験
コーヒーを飲むと、かえって水分が抜ける?
よく聞く説
カフェインには利尿作用があるから、コーヒーは水分補給にならない。むしろ脱水になる。そんな話、聞いたことあるよね。
試したこと
同じ人に3日ずつ、コーヒーと水を飲んでもらった
イギリスのバーミンガム大学のチームが、ふだん1日3〜6杯飲む男性50人で実験。1日200mLを4杯、コーヒーの3日間と水の3日間を入れ替えて、体の水分量や尿を比べた。
わかったこと
体の水分は、水を飲んだときと変わらなかった
体の中の水分量も、1日の尿の量(約2.4L)も、血液の指標も、コーヒーと水でほとんど同じ。ほどほどの量なら、水と同じように水分補給になると著者たちは結論した。
まだわからないこと
コーヒー好きの男性だけの話
対象は、カフェインに慣れた男性だけ。女性や、ふだん飲まない人、もっとたくさん飲む場合で同じかは、この研究ではわからない。
出典: Killer et al., "No Evidence of Dehydration with Moderate Daily Coffee Intake: A Counterbalanced Cross-Over Study in a Free-Living Population" (PLoS ONE, 2014)
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レビュー
寝酒をするとぐっすり眠れる?
よく聞く説
眠れない夜に一杯飲むと、すっと寝つける。だから寝酒はよく眠るコツ、と思っている人もいるよね。
調べた人
お酒と睡眠の研究を、まとめて読み直した
ロンドンの睡眠クリニックの研究者たちが、健康な人がお酒を飲んで眠った実験を、知られている限り集めて整理した。
ほんとのところ
寝つきは早いけど、夜の後半が乱れる
どの量でも、寝つくまでの時間は短くなり、夜の前半は深く眠れた。でも後半は眠りが乱れやすくなった。夢を見るレム睡眠の始まりも、どの量でも遅れていた。
まだわからないこと
健康な人の話で、毎晩の寝酒は別
集めたのは健康な人の研究だけ。毎晩飲み続けた場合や、眠りに悩みがある人で同じかは、このまとめだけでは言い切れない。数字でまとめた分析ではなく、研究を読み比べた整理でもある。
出典: Ebrahim et al., "Alcohol and Sleep I: Effects on Normal Sleep" (Alcoholism: Clinical and Experimental Research, 2013)
レビュー
水は1日8杯飲まなきゃダメ?
よく聞く説
「1日にコップ8杯の水を飲もう」ってよく聞くよね。でも、それを確かめた研究があるかというと、実はかなりあやしい。
調べた人
腎臓の研究者が、出どころを追いかけた
2002年、ダートマス大学で腎臓の働きを研究してきたバルティン先生が、この説の根拠を探した。健康な人がみんな8杯飲むべきだと示した研究は、見つからなかった。
ほんとのところ
お茶もコーヒーも、ちゃんと数に入る
必要な水分は、水以外の飲み物や食事からもとれている。カフェイン入りの飲み物も、ほとんどの人では水分に数えていいとされた。のどが渇いたら飲む、で足りる人が多い。
まだわからないこと
暑い日・運動のあと・持病があるときは別
これは、ふつうの気候でふつうに暮らす健康な大人の話。真夏や激しい運動のあと、医師に水分を多めにと言われている人は、そちらが優先。
出典: Valtin, "'Drink at least eight glasses of water a day.' Really? Is there scientific evidence for '8 × 8'?" (American Journal of Physiology, 2002)
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観察研究
1日1万歩って、本当に必要?
よく聞く説
歩数の目標といえば1万歩。でもこの数字、日本で発売された歩数計「万歩計」の名前から広まったとされていて、研究から出てきた数字ではないらしい。
調べたこと
高齢の女性1万6千人の歩数を記録
ハーバード大学などのチームが、高齢の女性16,741人に1週間歩数計をつけてもらい、その後およそ4.3年の経過を追った。
わかったこと
7,500歩くらいで頭打ちになった
1日約2,700歩の人に比べ、約4,400歩の人は亡くなるリスクが4割ほど低かった。歩くほどリスクは下がったけど、7,500歩あたりで横ばいになった。
まだわからないこと
歩いたから長生き、とまでは言えない
これは観察した研究なので、もともと元気な人がよく歩いていただけ、という可能性は残る。対象も高齢の女性だけで、若い人や男性で同じかはわからない。
出典: Lee et al., "Association of Step Volume and Intensity With All-Cause Mortality in Older Women" (JAMA Internal Medicine, 2019)