SEADICE / EVIDENCE / 意思決定バイアス

EVIDENCE / 意思決定バイアス

意思決定バイアスの研究まとめ

意思決定バイアスについて、研究でわかったことを16本、元の論文の出典つきでまとめています。わかったことだけでなく、研究の限界や「まだわからないこと」も書いています。

ランダム化比較試験

ルーレットで出た数字が答えに影響するなんてあり得る?

完全にランダムだと分かっている数字を先に見せられただけで、その後の見積もり(推測)がその数字に引っ張られてしまう「アンカリング効果」が確認されている。

研究

どんな研究?

参加者の前で0〜100の目盛りの回転盤を回し(実際は10か65しか出ない仕掛け)、その数字を見せてから「国連加盟国のうちアフリカの国の割合」を推測させた。

結果

数字で見ると

ルーレットで10を見たグループの推測値の中央値は25%だったのに対し、65を見たグループは45%だった。参加者はルーレットが無関係なランダムな数字だと知っていたにもかかわらず、その数字に推測が引きずられた。

出典: Tversky & Kahneman, "Judgment under Uncertainty: Heuristics and Biases" (Science, 1974)

実験

「助かる人数」と「死ぬ人数」、同じ話でも選択が変わる?

内容がまったく同じ選択肢でも、「〇人が助かる」という利益表現より「〇人が死ぬ」という損失表現で提示された方が、人はリスクを取る選択を選びやすくなる。

研究

どんな研究?

600人が死亡すると予想される病気の対策を、確実な案とリスクのある案で、「助かる人数」または「死ぬ人数」で表現して示し、どちらを選ぶか参加者に尋ねた。

結果

数字で見ると

「助かる」表現では約72%が確実な案を選び、「死ぬ」表現では約78%がリスクのある案を選んだ。中身は同じでも表現で選択が逆転した。後年の大規模追試でも確認されている。

出典: Tversky & Kahneman, "The Framing of Decisions and the Psychology of Choice" (Science, 1981)

実験

自分で組み立てた家具を高く評価してしまうのはなぜ?

自分の手で組み立てたり作ったりしたものは、たとえ出来栄えが未熟でも、既製品より高く価値を評価してしまう「IKEA効果」が確認されている。

研究

どんな研究?

研究チームが参加者にIKEAの収納ボックスを組み立てさせる実験、折り紙を折らせる実験、レゴを組み立てさせる実験など複数の実験を行い、自作したものへの評価額と既製品への評価額を比較した。

結果

数字で見ると

自分で組み立てた参加者は、完成品を見ただけの参加者より高い金額を払ってもよいと評価した。ただし組み立てを完成できなかったり、作ったものを壊した場合は、この効果が消えた。

出典: Norton, Mochon & Ariely, "The 'IKEA Effect': When Labor Leads to Love"

あわせて読む自分のものになった途端、同じマグカップが高く見えるのはなぜ?自分のものや自分で作ったものを高く見てしまう

メタ分析

何度も見るだけで好きになる、はなぜ起きるのか?

意味や理由が分からないものでも、単に目にする回数が増えるだけで、人はそれを好ましく感じるようになる「単純接触効果」が確認されている。

研究

どんな研究?

漢字に似た図形、無意味な単語、顔写真などを、0〜25回ほど回数を変えて参加者に繰り返し見せ、意味を教えないまま、それぞれへの好感度を評価させた。

結果

数字で見ると

見せられた回数が多い刺激ほど、好感度の評価が高くなる傾向が見られた。この効果はその後のメタ分析でも確認されたが、効果は小さく、繰り返しすぎると頭打ちになるとされる。

出典: Zajonc, "Attitudinal Effects of Mere Exposure" (Journal of Personality and Social Psychology Monograph Supplement, 1968)

初期設定が違うだけで、臓器提供の同意率は変わる?

「提供する」が初期設定の国では、同意率がほぼ100%です。「提供したい人が申し込む」方式の国では、大きく下がります。人は初期設定を変えにくい生き物です。

研究

どんな研究?

ヨーロッパ各国の臓器提供の制度を比較した研究。「希望者が意思表示する方式」と「拒否しなければ提供者になる方式」で、国ごとの同意率を比べました。

結果

数字で見ると

申し込み方式のドイツの同意率は約12%、拒否しなければ提供者になる方式のオーストリアは99.98%でした。制度の違いが、同意率の差の大きな要因と考えられます。

出典: Johnson & Goldstein, "Do Defaults Save Lives?" (Science, 2003)

ランダム化比較試験

自分のものになった途端、同じマグカップが高く見えるのはなぜ?

人は、持っているだけのものを、持っていない時より高く評価します。この「保有効果」のせいで、売る側の希望価格は、買う側の希望価格の約2倍になりました。

研究

どんな研究?

大学生の教室実験。参加者の半分に大学ロゴ入りのマグカップをランダムに配り、売り手と買い手に分けて、売りたい価格と買いたい価格を提示してもらう市場を作りました。

結果

数字で見ると

売り手が求める価格は平均約7ドル、買い手が出してよい価格は約3ドルでした。理論上は約半数のマグが取引されるはずが、実際の取引は大幅に少なくなりました。

出典: Kahneman, Knetsch & Thaler, "Experimental Tests of the Endowment Effect and the Coase Theorem" (Journal of Political Economy, 1990)

あわせて読む自分で組み立てた家具を高く評価してしまうのはなぜ?自分のものや自分で作ったものを高く見てしまう

あわせて読む損と得、どちらを重く感じる?手放すのが惜しい理由を、損失回避の大きさから説明する

実験

AIに反対されると答えを変えやすい?

変えやすかった。表情を判断する実験では、相手が人のときより、AIに違う答えを示されたときのほうが自分の答えを変えていた。

研究

どんな研究?

12枚の顔写真の表情が全体として悲しい寄りかうれしい寄りかを判断し、自分の答えのあとにAIか人の答えを見せた。一連の実験の参加者は計1,401人。

結果

数字で見ると

答えを変えたのは、AIと違った場面の32.7%、人と違った場面では11.3%。画面上の短い判断課題で、日常の判断に当てはまるかは不明だ。

出典: Glickman & Sharot, "How human–AI feedback loops alter human perceptual, emotional and social judgements" (Nature Human Behaviour, 2025)

あわせて読む機械の判定は人の目を狂わせる?機械の判断に、人の答えが引きずられやすい

メタ分析

人はニュースにだまされやすい?

見分ける力ははっきりあった。間違えるときは、偽ニュースに「だまされる」より、本当のニュースを「疑いすぎる」側に寄っていた。

研究

どんな研究?

本当のニュースと、事実確認で偽とされたニュースの正確さを評価させた67本の論文(40か国、19万4,438人)をまとめた。

結果

数字で見ると

生のデータがある22本(4万2,074人)では約59%が疑う側に寄っていた。偏り自体は小さく、実験の場面は実際のSNSの見方とは違う。

出典: Pfänder & Altay, "Spotting false news and doubting true news: a systematic review and meta-analysis of news judgements" (Nature Human Behaviour, 2025)

実験

「買わない」の言い方で買う人は減る?

「買わない」を「そのお金を別のことに取っておく」と言い換えるだけで、買うと答える人が減った。人は代わりの使い道を思い浮かべにくいようだ。

研究

どんな研究?

米国のオンライン参加者計2,325人に、映画のチケットやタブレットなどを買うかを尋ねた5つの実験。買わない選択肢の書き方だけを変えて比べた。

結果

数字で見ると

買うと答えた人は平均62.8%から47.8%に減った。代わりに買える物を書き出す実験では68.89%→40.48%。ただし想像で答える実験で、5つ中2つは差がはっきりしなかった。

出典: Plantinga, Krijnen, Zeelenberg & Breugelmans, "Evidence for opportunity cost neglect in the poor" (Journal of Behavioral Decision Making, 2018)

観察研究

980円が安く感じるのはなぜ?

人は数字の左端に強く引っ張られる。99で終わる価格からほんの少し上がるだけで、実際よりずっと大きく値上がりしたように反応していた。

研究

どんな研究?

アメリカの25の小売チェーンで売られた約3,500商品の販売データを分析し、価格の端数と売れ行きの関係を調べた。

結果

数字で見ると

99で終わる価格から1セント上がると、20セント以上値上がりしたかのように反応していた。ただしワーキングペーパーとして公開された分析。

出典: Strulov-Shlain, "More than a Penny's Worth: Left-Digit Bias and Firm Pricing" (SSRN Working Paper, 2019)

レビュー

使わないサブスクが続くのはなぜ?

何もしなければ続く仕組みでは、見直しが後回しになりやすい。カードが新しくなり手続きが必要な月には、解約がふだんより大きく増えていた。

研究

どんな研究?

大手カード会社の決済データで、10のサブスクの契約と解約を分析し、カードの更新で手続きが必要になった月の解約率を調べた。

結果

数字で見ると

カード更新の月に解約率が大きく上がり、やめにくさが事業者の収益を平均およそ2倍にしていると試算された。ただしモデルによる試算で、サービスによって異なる。

出典: Einav, Klopack & Mahoney, "Selling Subscriptions" (American Economic Review, 2025)

メタ分析

損と得、どちらを重く感じる?

人は同じ金額でも、得をするより損をする方を重く感じる傾向があった。多くの研究をまとめると、損は得の約2倍の重さだった。

研究

どんな研究?

1992〜2017年に報告された150の論文から、損失回避の強さを表す推定値607個を集めてまとめた分析。

結果

数字で見ると

損失を利益に比べて重く感じる係数は平均1.955。ただし、損失が全体として利益より強く影響するとは言えないと主張するレビューもあり、議論が続いている。

出典: Brown, Imai, Vieider & Camerer, "Meta-Analysis of Empirical Estimates of Loss Aversion" (Journal of Economic Literature, 2024)

あわせて読む自分のものになった途端、同じマグカップが高く見えるのはなぜ?手放すのが惜しい理由を、損失回避の大きさから説明する

メタ分析

選択肢が多すぎると選べなくなる?

有名なジャムの実験のように選択肢が多いと買う人が減った例はあるが、多くの実験をまとめると、選択肢の多さの影響は平均するとほぼゼロだった。

研究

どんな研究?

選択肢の多さが選ぶ意欲や満足に与える影響を調べた50の実験(63条件、5,036人)をまとめたメタ分析。

結果

数字で見ると

5,036人分をまとめると平均の影響はほぼゼロで、研究ごとのばらつきが大きかった。どんな条件で選択過多が起きるかは、まだ研究が続いている。

出典: Scheibehenne, Greifeneder & Todd, "Can There Ever Be Too Many Options? A Meta-Analytic Review of Choice Overload" (Journal of Consumer Research, 2010)

実験

大きな文字だと、覚えた気になりやすい?

なりやすかった。大きな文字で見た単語ほど「思い出せる」と自信を持ったが、実際に思い出せた数にはほとんど差がなかった。

研究

どんな研究?

大学生に単語を大きな文字(48ポイント)と小さな文字(18ポイント)で見せ、あとで思い出せる自信を0〜100で答えてもらい、実際の記憶と比べた。

結果

数字で見ると

自信は48ポイントの方が高く、実際の想起にほぼ差はなかった。文字の大きさは記憶にほぼ影響しないと事前に伝えても、自信の差は残った。単語リストでの結果。

出典: Rhodes & Castel, "Memory predictions are influenced by perceptual information: Evidence for metacognitive illusions" (Journal of Experimental Psychology: General, 2008)

あわせて読む読み返すより、自分でテストする方が記憶に残る?覚えた気になる感覚と、実際の記憶はずれやすい

実験

機械の判定は人の目を狂わせる?

顔写真の照合で、機械が「同一人物」と表示すると、人は別人を見分けにくくなった。よく確かめるよう指示しても判断は引っぱられた。

研究

どんな研究?

空港の自動ゲートのように2枚の顔写真に機械の判定を表示し、同じ人かを答えてもらった。英国の大学生30人ずつで3つの実験を行った。

結果

数字で見ると

別人の写真の正答率は「別人」表示で70%、「同一人物」表示で48%。判定を無視するよう指示しても下がった。対象は学生で、審査官ではない。

出典: Fysh & Bindemann, "Human–Computer Interaction in Face Matching" (Cognitive Science, 2018)

あわせて読むAIに反対されると答えを変えやすい?機械の判断に、人の答えが引きずられやすい

実験

顔の印象で判決は変わる?

信頼できなさそうな顔に見える人ほど、終身刑ではなく死刑を言い渡されていた。顔の印象と判決のあいだに関係が見られた。

研究

どんな研究?

米国フロリダ州で殺人罪の有罪判決を受けた742人の顔について、信頼できそうかどうかの印象を評価し、判決と比べた。

結果

数字で見ると

顔が信頼できなさそうなほど死刑が多かった。死刑判決後に無実とわかった人の顔でも同じ関係が見られた。相関の研究で、顔が原因とは断定できない。

出典: Wilson & Rule, "Facial Trustworthiness Predicts Extreme Criminal-Sentencing Outcomes" (Psychological Science, 2015)

スワイプで1本ずつ読めるアプリもあります。気になった話は、出典つきで友だちに送れます。

EVIDENCEアプリ(無料)

ほかの分野