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仕事と働き方の研究まとめ
仕事と働き方について、研究でわかったことを5本、元の論文の出典つきでまとめています。わかったことだけでなく、研究の限界や「まだわからないこと」も書いています。
実験
会議は立ってやれば短くなる?
よく聞く説
「会議は立ったままやれば早く終わる」ってよく聞くよね。でも短くした分、話し合いの中身まで薄くなったら意味がない。そこを確かめた実験がある。
試したこと
5人組のグループを、立つ組と座る組に分けた
1999年、アメリカの研究チームが、5人ずつのグループに話し合いで決める課題を出した。立ったまま話す56組と、座って話す55組で、かかった時間と決めた内容を比べた。
わかったこと
座った会議は34%長かったのに、決定は良くならなかった
座った会議は、立った会議より34%長くかかった。なのに、出てきた決定の質は座ったほうが良いわけではなかった。一方で、会議への満足度などには差が出ている。
まだわからないこと
実験のためのグループで、職場のチームではない
比べたのは実験のために集まったグループ。毎日一緒に働くチームや、もっと複雑な議題で同じになるかはわからない。決定の質に差が出なかったことは、研究者にとっても予想外だったらしい。
出典: Bluedorn et al., "The effects of stand-up and sit-down meeting formats on meeting outcomes" (Journal of Applied Psychology, 1999)
あわせて読む立って作業すると、成績が上がる?立っても成績や決定の質は同じで、熱意や満足が変わる
ランダム化比較試験
在宅勤務だと、仕事の成果は落ちる?
素朴な疑問
家だとさぼる人が増えて、仕事が落ちるんじゃない? そう心配する上司は多いよね。中国の大きな会社が、社員をくじ引きのように分けて確かめた。
試したこと
誕生日の奇数・偶数で、週2日在宅の組を決めた
2021〜22年、旅行会社Trip.comの航空券部門とIT部門の大卒社員1,612人を、誕生日が奇数か偶数かで分けた。片方は水曜と金曜を在宅にでき、もう片方は週5日出社。6か月続けた。
わかったこと
辞める人は3分の1減り、評価は変わらなかった
在宅ありの組は、辞めた人が7.2%から4.8%へ、約3分の1減った。仕事の満足度も上がった。その後2年間の人事評価や昇進には、はっきりした差は見つからなかった。
まだわからないこと
「上がった」ではなく「下がらなかった」
わかったのは、成果が上がったではなく、落ちなかったということ。しかも週2日だけの在宅で、中国の1社の大卒社員の話。毎日在宅や、ほかの国・職種で同じかはわからない。
出典: Bloom et al., "Hybrid working from home improves retention without damaging performance" (Nature, 2024)
メタ分析
こまめに休むと、仕事がはかどる?
よく聞く説
「こまめに休んだほうが効率が上がる」ってよく言うよね。疲れはとれそうだけど、仕事の出来まで良くなるのかな。
調べた人
10分以内の休憩の実験を、まとめて分析
2022年、ルーマニアの西ティミショアラ大学のチームが、10分以内の短い休憩を試した実験をまとめて分析した。19件の報告に含まれる22の対象者グループ、合わせて2,335人分のデータ。
ほんとのところ
元気は戻る。でも成績はほとんど変わらなかった
短い休憩で元気さは増し、疲れは減った(どちらも効果は小さめ)。でも仕事の成績全体には、はっきりした差が出なかった。差が見えたのは、頭をあまり使わない作業だけ。
まだわからないこと
頭を使い切ったあとは、10分では足りないかも
休憩が長いほど成績は伸びやすい傾向もあった。研究者は、ぐったりするほど頭を使う作業のあとは、10分より長い休憩が要るかもしれないと書いている。集まった研究の数もまだ少ない。
出典: Albulescu et al., "\"Give me a break!\" A systematic review and meta-analysis on the efficacy of micro-breaks for increasing well-being and performance" (PLOS ONE, 2022)
実験
壁をなくせば、会話は増える?
よく聞く説
仕切りをなくしたオープンなオフィスにすれば、顔を合わせて話す機会が増える。そう考えて模様替えする会社は多いよね。でも実際に測ってみたら、逆だったらしい。
調べたこと
会話を記録するバッジで、引っ越しの前後を比べた
ハーバード大学などのチームが、オープンなオフィスに移った大企業2社の本社で、社員に会話を記録するバッジをつけてもらった。メールやチャットの量も、会社のサーバーから数えた。
わかったこと
対面の会話は約7割減って、メールが増えた
対面で話す時間は、2社とも約7割減った。1社目では52人の対面の時間が72%減り、送るメールは56%、チャットは67%増えた。会話が消えたのではなく、画面越しに移った。
まだわからないこと
2社・152人の話で、理由はまだ推測
調べたのは2社で、52人と100人。1社目は生産性も下がったと会社から聞いたそうだけど、数字は出ていない。なぜ人が話さなくなるのかも、研究者の推測の段階。
出典: Bernstein & Turban, "The impact of the 'open' workspace on human collaboration" (Philosophical Transactions of the Royal Society B, 2018)
メタ分析
休みの日は、仕事のことを考えないほうがいい?
素朴な疑問
休日もつい仕事のメールを開いちゃう。頭から仕事を切り離したほうが、本当に回復するのかな。
調べた人
3万8千人分の研究をまとめた
2017年、ドイツ連邦労働安全衛生研究所の研究者が、仕事から気持ちが離れることについての86本の論文、働く人38,124人分のデータをまとめて分析した。
わかったこと
切り離せる人ほど、疲れにくく、よく眠れていた
仕事から気持ちが離れている人ほど、疲れ切った感じが少なく、よく眠れ、生活の満足度も高い傾向があった。仕事の成績とも、小〜中くらいのプラスの関係があった。
まだわからないこと
「考えないほど良い」とまでは言えない
見ているのは関係で、離れたから元気になったのか、元気だから離れられたのかは区別しきれない。創造性とは逆にマイナスの関係も出ていて、休日の考えごとが全部悪いとは限らない。
出典: Wendsche & Lohmann-Haislah, "A Meta-Analysis on Antecedents and Outcomes of Detachment from Work" (Frontiers in Psychology, 2017)