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EVIDENCE / 運動と気分
運動と気分の研究まとめ
運動と気分について、研究でわかったことを8本、元の論文の出典つきでまとめています。わかったことだけでなく、研究の限界や「まだわからないこと」も書いています。
メタ分析
たった1回の運動でも気分は上がるのか?
1回の運動の直後には、全般的な気分の改善、不安の軽減、抑うつ症状の低下が見られた。ただし効果の大きさは研究でばらつく。
研究
どんな研究?
オランダ・ティルブルフ大学などの研究チームが、運動前と運動後30分以内に気分を測った103件の研究(4671人)を統合したメタ分析。
結果
数字で見ると
運動後の改善は、気分で効果量g=0.34、不安でg=0.50、抑うつ症状でg=0.41。研究間のばらつきが大きく、健康状態や運動の強度、種類では説明できなかった。
出典: Weinstein, van Aert, Donovan, Muskens & Kop, "Affective Responses to Acute Exercise: A Meta-Analysis of the Potential Beneficial Effects of a Single Bout of Exercise on General Mood, Anxiety, and Depressive Symptoms" (Psychosomatic Medicine, 2024)
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メタ分析
自然の中での運動は、短時間でも心に効く?
緑のある場所での運動は、ごく短時間でも自尊心と気分を高め、その後は効果の伸びが小さくなっていく。
研究
どんな研究?
英エセックス大学の研究チームが、英国の10件の研究(1252人)のデータを統合し、緑の中での運動の強度・時間と、自尊心・気分の改善の関係を調べたメタ分析。
結果
数字で見ると
自尊心の改善は効果量d=0.46、気分はd=0.54。短時間の運動で大きな効果が出てその後は逓減し、水辺がある環境では効果が大きかった。
出典: Barton & Pretty, "What Is the Best Dose of Nature and Green Exercise for Improving Mental Health? A Multi-Study Analysis" (Environmental Science & Technology, 2010)
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実験
歩くとアイデアが出やすくなる?
座っている時より歩いている時の方が、発想の広がりを測る課題の成績が高く、歩いた直後に座っても少し効果が残った。
研究
どんな研究?
スタンフォード大学の研究チームが、4つの実験で、座る・トレッドミルを歩く・屋外を歩く・車いすで屋外に出る条件で、創造的な発想を測る課題の成績を比べた。
結果
分かったこと
実験1では、歩くと発想課題の成績が上がった人が81%だった。屋外を歩くと、もっとも新しく質の高い類推が出た。ただし一つの答えを導く課題では効果が小さかった。
出典: Oppezzo & Schwartz, "Give Your Ideas Some Legs: The Positive Effect of Walking on Creative Thinking" (Journal of Experimental Psychology: Learning, Memory, and Cognition, 2014)
ランダム化比較試験
短い有酸素運動で「不安になりやすさ」が和らぐ?
動悸などの身体感覚を怖がりやすい人が、短期間の有酸素運動を続けると、その怖がりやすさ(不安感受性)が下がった。ただし24人の小規模な研究。
研究
どんな研究?
不安感受性が高い24人を無作為に2群に分け、1回20分の有酸素運動を6回行う群と運動しない対照群で、不安感受性の変化を比べた。
結果
分かったこと
運動群は不安感受性が有意に低下し、運動しなかった対照群は変化がなかった。動悸や息切れに似た運動中の感覚に慣れることが理由と考えられている。
出典: Broman-Fulks & Storey, "Evaluation of a Brief Aerobic Exercise Intervention for High Anxiety Sensitivity" (Anxiety, Stress & Coping, 2008)
実験
10分の高強度運動で、少し休むと気分と記憶が整う?
1分の全力運動を10セット行うと、直後は気分がいったん落ちるが、30分の休憩後には気分が上向き、作業記憶も運動前より高かった。
研究
どんな研究?
スペインの研究チームが、男子大学生25人に最大酸素摂取量相当の強度で1分間の自転車運動を10セット行わせ、運動前・直後・30分後の気分と数唱課題を測った。
結果
分かったこと
気分は運動直後に有意に低下し、30分の回復後に有意に上昇した。数唱課題の成績は運動直後と30分後のどちらも運動前より高かった。対照群はない。
出典: Martínez-Díaz & Carrasco Páez, "Little but Intense: Using a HIIT-Based Strategy to Improve Mood and Cognitive Functioning in College Students" (Healthcare, 2023)
メタ分析
運動は、うつや不安の症状をどれくらい和らげるのか?
運動を取り入れると、うつ・不安・心理的苦痛の症状が通常のケアより軽くなる傾向が、多数の試験の統合で示されました。強めの運動ほど効果が大きい傾向でした。
研究
どんな研究?
ランダム化比較試験をまとめた研究(メタ分析)を、さらにまとめた包括的レビュー。97件のレビュー、1,039件の試験、約12.8万人分のデータを統合しました。
結果
数字で見ると
うつ病への効果量の中央値は-0.43、不安は-0.42、心理的苦痛は-0.60で、いずれも中程度の改善でした。長期の介入より短期の介入のほうが効果は大きい傾向でした。
出典: Singh et al., "Effectiveness of Physical Activity Interventions for Improving Depression, Anxiety and Distress: An Overview of Systematic Reviews" (British Journal of Sports Medicine, 2023)
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観察研究
運動する人は、心の調子が悪い日が少ない?
運動をしている人は、していない人より、心の調子が悪い日が月に約1.5日少ない傾向がありました。ただし相関で、運動が原因とは断定できません。
研究
どんな研究?
米国の調査(BRFSS)に答えた18歳以上の約123万人のデータを分析。過去1か月の「心の調子が悪い日数」と、運動の種類・頻度・時間との関係を調べた横断研究です。
結果
数字で見ると
運動する人は悪い日が約1.49日少なく、チームスポーツ・サイクリング・有酸素運動で差が大きめでした。効果が大きい目安は、1回約45分を週3〜5回でした。
出典: Chekroud et al., "Association Between Physical Exercise and Mental Health in 1.2 Million Individuals in the USA Between 2011 and 2015" (The Lancet Psychiatry, 2018)
実験
15分の早歩きで欲求は変わる?
15分早歩きした後は、座って休んだ日より甘い物への欲求が下がり、気分と活力も上がった。ストレスのかかる課題の後も欲求の高まりが小さかった。
研究
どんな研究?
甘い物を毎日食べる体重やや多めの成人47人が、別の日に「15分の早歩き」と「15分座って休む」の両方を行い比べた。
結果
数字で見ると
47人で、早歩きの日は甘い物への欲求が下がった。ただし食べ物への欲求の実験で、買い物欲で確かめたものではない。目の前で甘い物を手に取る場面では差がはっきりしなかった。
出典: Ledochowski, Ruedl, Taylor & Kopp, "Acute Effects of Brisk Walking on Sugary Snack Cravings in Overweight People" (PLoS ONE, 2015)