SEADICE / EVIDENCE / 危険な相手
EVIDENCE / 危険な相手
危険な相手の研究まとめ
危険な相手について、研究でわかったことを38本、元の論文の出典つきでまとめています。わかったことだけでなく、研究の限界や「まだわからないこと」も書いています。
観察研究
話せる相手がいることの意味は?
交際相手からの暴力を受けている女性のなかで、周りの支えが多い人ほど、不安などの心の不調のリスクが低くなっていました。
研究
どんな研究?
アメリカの家庭医の診療所に通う18〜65歳の女性1,152人を対象に、心理的なものを含む交際相手からの暴力と心の健康の関係を調べました。
結果
数字で見ると
周りの支えが多い人は、不安のリスクが約0.3倍、心の健康が悪いと感じるリスクが約0.5倍と低めでした(暴力の頻度を考えに入れた数字)。
まだわからないこと
ここはまだ不確か
一時点の調査で、支えが不調を防いだのか、元気な人ほど支えを得やすいのかは区別できません。米国の診療所に来た女性が対象です。
出典: Coker et al. (2002). Social support protects against the negative effects of partner violence on mental health. Journal of Women's Health & Gender-Based Medicine
メタ分析
相談支援は心を守る?
相談に乗り、安全計画づくりを手伝う支援(アドボカシー)では、医療機関での短い支援でうつ状態になる人が少なくなっていました。
研究
どんな研究?
被害を受けた15〜65歳の女性への支援(相談・安全計画・支援先へのつなぎ)の効果を、13件の比較試験、計2,141人分でまとめた研究です。
結果
数字で見ると
医療機関での短い支援では、うつ状態になる人が少なめでした(2件、149人)。一方、短い支援で身体的暴力が減る効果は3件をまとめても確認されず。証拠の確かさは「中程度〜非常に低い」です。
まだわからないこと
ここはまだ不確か
多くの試験は人数が少なく、方法も場所もばらばらでした。研究者自身も、効果の大きさや、どんな場面で効くのかははっきりしないと書いています。
出典: Rivas et al. (2015). Advocacy interventions to reduce or eliminate violence and promote the physical and psychosocial well-being of women who experience intimate partner abuse. Cochrane Database of Systematic Reviews
観察研究
支配的な相手と別れるとき、何に注意?
支配の強い相手と別れた・離れた状態は、交際相手による殺害の危険を高める要因の一つでした。
研究
どんな研究?
アメリカ11都市で、交際相手に殺害された女性220人と、被害経験はあるものの殺害されていない女性343人を比べた研究です。
結果
数字で見ると
相手との別れ・別居、とくに支配の強い相手との別離が、殺害のリスクを高める要因として確認されました。すでに深刻な暴力があった関係が対象で、すべての交際に当てはまるとは限りません。
まだわからないこと
ここはまだ不確か
すでに暴力があった関係を、亡くなった人の身近な人への聞き取りで比べた研究です。米国のデータで、別れ際に危険が高まる一つの目安であり、個別の予測はできません。
出典: Campbell et al. (2003). Risk factors for femicide in abusive relationships: results from a multisite case control study. American Journal of Public Health
観察研究
友達付き合いを制限されるのは?
交友関係を狭めたり監視したりすることは「支配・孤立」として、心理的な虐待を測る質問紙の柱の一つになっています。
研究
どんな研究?
香港の女性1,198人を対象に、心理的な虐待を測る質問紙(PMWI)の中国語版を確かめた研究です。
結果
数字で見ると
「支配・孤立」と「言葉・感情による虐待」の2つの要素が、英語版と同じように確認されました。「支配・孤立」の信頼性の指標は0.9を超えています。女性対象の調査なので、ほかの関係には別の確認が必要です。
まだわからないこと
ここはまだ不確か
質問紙が正しく測れるかを確かめた研究で、香港の女性が対象です。男性や同性カップル、日本の人に同じように使えるかは、別に確かめる必要があります。
出典: Cheung et al. (2020). Validation of the Psychological Maltreatment of Women Inventory for Chinese Women. Journal of Interpersonal Violence
観察研究
束縛や見下しはなぜ見過ごされる?
支配・独占欲や見下す言動は、対立・仕返しのような分かりやすい行動より深刻だと受け止められにくく、とくに男性でその傾向が強めでした。
研究
どんな研究?
オーストラリアの18〜26歳201人(男性49人・女性152人)に、交際相手のさまざまな行動が危険のサインとしてどれくらい深刻かを評価してもらった調査です。
結果
数字で見ると
支配・独占欲や見下す言動を「非常に深刻」とした人は、女性で半数〜3分の2、男性では約3分の1でした。対立・仕返しは、男性の半数以上、女性の67%が非常に深刻としました。
まだわからないこと
ここはまだ不確か
オーストラリアの18〜26歳201人の便宜的なサンプルで、男性は49人と少なめです。リストの行動を評価しただけで、実際の関係で気づけるかは調べていません。
出典: Towler, Eivers, & Frey (2020). Warning Signs of Partner Abuse in Intimate Relationships: Gender Differences in Young Adults' Perceptions of Seriousness. Journal of Interpersonal Violence
観察研究
自分を責めれば立ち直れる?
研究では逆でした。自分の行動を責めるほど苦しさは強く、回復を支えたのは「いま自分で決められる」という感覚だったんです。
研究
どんな研究?
性被害を受けた女性171人を、被害後4回にわたって追跡した研究です。自分を責める気持ちや、回復を自分でコントロールできている感覚と、苦しさの関係を調べました。
結果
数字で見ると
自分の行動を責める気持ちは、苦しさ(心理的な苦痛)の強さと結びついていました。回復にいちばん役立つ方向に働いたのは、回復を自分でコントロールできている感覚です。恋人からの被害に限った研究ではありません。
まだわからないこと
まだわからないこと
米国の性被害を受けた女性171人の追跡で、恋人からの被害や男性には当てはまらないかもしれません。観察研究なので、感覚を変えれば苦しさが減るという因果までは示していません。
出典: Frazier PA (2003). Perceived control and distress following sexual assault: a longitudinal test of a new model. Journal of Personality and Social Psychology
観察研究
恋の行方は本人がいちばんわかる?
研究では、友人の見方のほうが厳しめで、別れを正しく予測していました。迷ったら、信頼できる人の目を借りるのも一つの方法です。
研究
どんな研究?
北米の異性カップルとその友人たちに、関係をどう見ているかを聞き、3回にわたって追跡した研究です。
結果
数字で見ると
友人の見方は本人より厳しめで、なかでも女性側の友人は別れを特に正しく予測していました。友人に関係の様子を打ち明けていることが、予測の正しさを支えていたんです。相談で関係が良くなるという研究ではありません。
まだわからないこと
まだわからないこと
北米のカップルとその友人を対象にした研究で、ほかの国や年代で同じかはわかりません。友人の見方が正しかったのは「別れるかどうか」の予測で、どんな相手が危険かを見分けられるかまでは調べていません。
出典: Agnew CR, Loving TJ, Drigotas SM (2001). Substituting the forest for the trees: Social networks and the prediction of romantic relationship state and fate. Journal of Personality and Social Psychology
観察研究
言葉のきつさは様子見でいい?
研究では、言葉などによる心理的な攻撃が、その後に初めて起きる身体的な攻撃に先立っていました。小さなサインとして覚えておいてください。
研究
どんな研究?
婚約中の393組から、結婚前に身体的な攻撃がなかった人を選び、結婚後30か月まで追跡しました。
結果
数字で見ると
言葉などによる心理的な攻撃が、その後に初めて起きる身体的な攻撃を予測していました。結果は男女とも同じでした。1989年発表の結婚初期の研究なので、交際初期の若い人にそのまま当てはまるとは限りません。
まだわからないこと
まだわからないこと
婚約中カップルを対象にした1989年の研究で、交際初期の若い人や、ほかの国で同じかはわかりません。観察研究なので、心理的な攻撃が必ず身体的な攻撃に進むという意味ではありません。
出典: Murphy CM, O'Leary KD (1989). Psychological aggression predicts physical aggression in early marriage. Journal of Consulting and Clinical Psychology
観察研究
別れた後のつきまといは珍しい?
珍しくありません。研究では、交際中に相手を精神的に追い詰めていた人ほど、別れた後のつきまといが多かったんです。
研究
どんな研究?
アメリカの大学生(男性139人、女性233人)を対象にした2つの調査で、別れた後のつきまといに近い行動と、交際中のふるまいの関係を調べました。
結果
数字で見ると
約4割(38.5%と44.6%)が、別れた後に少なくとも1つのつきまといに近い行動をしたと答えました。「支配したい気持ち」は、つきまといに直接結びついていました。自己申告で、深刻なストーカー行為だけを数えたものではありません。
まだわからないこと
まだわからないこと
米国の大学生(男女372人)の自己申告で、行動の深刻さはさまざまです。観察研究なので、支配したい気持ちがつきまといの原因とまでは言い切れません。年齢や国が違う人で同じかは確かめられていません。
出典: Davis KE, Ace A, Andra M (2000). Stalking perpetrators and psychological maltreatment of partners: anger-jealousy, attachment insecurity, need for control, and break-up context. Violence and Victims
観察研究
お金の隠しごとはよくあること?
研究では、既婚者の52%が経験していました。相手の収入や支出を一方的に管理・制限する経済的DVとは、別のものとして見分けておきたいですね。
研究
どんな研究?
アメリカの既婚者946人(全国から偏りなく選んだ人たち)に、配偶者にお金の使い方や借金を隠す「経済的不誠実」の経験や、不倫などとの関係を尋ねました。
結果
数字で見ると
52%が経済的不誠実を経験していました。ほかの異性に言い寄る行動をしている人ほど、経済的不誠実と不倫の両方が起きやすくなっていました。一時点の自己申告の調査なので、因果関係はわかりません。
まだわからないこと
まだわからないこと
米国の既婚者への一時点のオンライン調査で、どれが原因かはわかりません。隠しごとは自己申告なので、実際より少なく答えた人もいるかもしれません。交際中のカップルは対象外です。
出典: Dew JP, Saxey MT, Mettmann A (2022). Money lies and extramarital ties: Predicting separate and joint occurrences of financial deception and extramarital infidelity. Frontiers in Psychology
観察研究
第一印象が完璧な人は安心?
自己愛の傾向が強い人ほど、第一印象で好かれやすかったんです。特権意識や人を利用する傾向さえ、魅力的に映っていました。
研究
どんな研究?
心理学科の新入生73人が、短い自己紹介をもとにお互いを評価し合いました(2,628組分の評価)。
結果
数字で見ると
2,628組分の評価で、自己愛の傾向が強い人ほど好かれていました。おしゃれな服装、表情、自信のある話し方などが理由でした。長い目で見ると問題になりやすい面ほど、初対面では魅力的に映っていました。
まだわからないこと
恋愛でも同じ?
ドイツの心理学科の新入生が、短い自己紹介を見て評価した結果です。恋愛関係を直接調べたものではなく、長く付き合ううちに評価がどう変わるかも、この研究では追っていません。
出典: Back, M. D., Schmukle, S. C., & Egloff, B. (2010). Why are narcissists so charming at first sight? Journal of Personality and Social Psychology
観察研究
最初の魅力はなぜ薄れる?
自己愛の強い人は時間とともに好かれなくなり、傲慢で攻撃的な言動が目立つようになっていました。
研究
どんな研究?
311人が少人数のグループで、週1回、3週間にわたって交流し、お互いの印象を評価しました。
結果
数字で見ると
311人の3週間の交流で、最初は堂々とした振る舞いが評価されましたが、次第に信頼できない人と見られるようになりました。3週間の実験なので、長いお付き合いでの変化までは見ていません。
まだわからないこと
実験室の3週間の話
初対面どうしが少人数で会った実験室の研究です。長い友だち付き合いや恋人関係で同じ流れになるかは、この研究だけではわかりません。
出典: Leckelt, M., et al. (2015). Behavioral processes underlying the decline of narcissists' popularity over time. Journal of Personality and Social Psychology
観察研究
離れられないのは意志が弱いから?
そうではありません。ひどい扱いと優しさが交互に来ることや力の差が、別れた後も続く愛着の強さと結びついていました。
研究
どんな研究?
暴力や支配のある関係を離れたばかりの女性75人を、別れた直後と6か月後に調べました。
結果
数字で見ると
愛着は6か月で約27%弱まりましたが、関係の中で受けた扱いが、6か月後の愛着の個人差の55%を説明していました。対象が女性に限られ、人数も多くありません。
まだわからないこと
女性75人の追跡
暴力のある関係を離れた女性75人の研究で、男性や同性カップル、今も関係の中にいる人に当てはまるかはわかりません。関連を見たもので、原因と結果を分けきれてはいません。
出典: Dutton, D. G., & Painter, S. (1993). Emotional Attachments in Abusive Relationships: A Test of Traumatic Bonding Theory. Violence and Victims
観察研究
結びつきを強めるものは?
子どもの頃のつらい経験や見捨てられる不安が、傷つけてくる相手への結びつきを強める要因になっていました。
研究
どんな研究?
いま暴力や支配のある関係にいる354人に、子どもの頃の経験、愛着の傾向、相手への結びつきの強さを尋ねました。
結果
数字で見ると
354人の調査で、虐待の経験と不安定な愛着の傾向は、年齢・性別・恋愛感情の影響を除いても結びつきの強さを予測していました。結びつきが強い人ほどPTSD(トラウマ後のつらい症状)も強めでした。一時点の調査で、因果は確定していません。
まだわからないこと
一度きりの調査
いま暴力のある関係にいる人に一度だけ尋ねた調査です。子どもの頃の経験は思い出してもらった答えで、どちらが先かという因果の向きは確かめられていません。
出典: Shaughnessy, E. V., et al. (2023). Risk factors for traumatic bonding and associations with PTSD symptoms: A moderated mediation. Child Abuse & Neglect
観察研究
嫉妬は愛情の証?
大事なのは嫉妬の強さより、それが外出の制限や監視などの支配的な行動につながるかどうかでした。
研究
どんな研究?
エクアドル北部の低所得の既婚者1,216人への調査に、48件のインタビューと8件のグループ討論を組み合わせました。
結果
数字で見ると
男性の嫉妬は支配的な行動と強く関連し(調整オッズ比14.47)、支配的な行動は身体的・性的な暴力とも関連していました(2.16)。特定の地域の研究で、ほかの環境にそのまま当てはまるとは限りません。
まだわからないこと
エクアドルの一地域
エクアドル北部の低所得の既婚者の調査です。一時点の関連なので、嫉妬が支配的な行動を生むと確定したわけではありません。他の国や若いカップルで同じかもわかりません。
出典: Buller AM, Pichon M, Chevalier C, Treves-Kagan S (2022). The role of gender and romantic jealousy in intimate partner violence against women, a mixed-methods study in Northern Ecuador. Culture, Health & Sexuality
観察研究
嫉妬が強いほど愛が深い?
交際中の人で恋愛感情の強さを予測したのは、嫉妬ではなく、見捨てられることへの不安(愛着不安)でした。
研究
どんな研究?
チリの332人(交際中209人と、交際していない人を含む123人。いずれも67%が女性)に、嫉妬・愛着不安・恋愛感情について尋ねました。
結果
数字で見ると
愛着不安と嫉妬の相関は、交際中のグループで強く(r=0.57)、123人のグループでは弱めでした(r=0.24)。一時点の調査なので、因果関係まではわかりません。
まだわからないこと
チリの小さな調査
チリの332人の短い報告で、嫉妬は1問だけで尋ねています。恋愛感情も「依存」の面で測ったもので、一時点の相関なので因果関係まではわかりません。
出典: Fernandez AM, Barbato MT, Cordero B, Acevedo Y (2023). What's love got to do with jealousy? Frontiers in Psychology
観察研究
「自分がおかしい」と感じたら?
その戸惑いは、ガスライティング(記憶や感覚を疑わせる心理的な虐待)を経験した人に報告されている反応なんです。
研究
どんな研究?
交際関係でガスライティングを経験したと感じている18〜69歳の65人(平均29歳)に、どんな関係の中で起きたのかを尋ねました。
結果
数字で見ると
65人の多くが、愛情表現と否定的な言動が入り混じった関係の中で起きたと語っていました。回復した人の多くは、相手から離れることの大切さを挙げていました。本人の語りにもとづく調査です。
まだわからないこと
自分で答えた65人
「経験した」と自分で思った65人の語りを集めた研究で、相手側の話や、どれくらい多く起きているかはわかりません。回答者の多くは異性愛の女性でした。
出典: Klein, W., Li, S., & Wood, S. (2023). A qualitative analysis of gaslighting in romantic relationships. Personal Relationships
レビュー
なぜ渦中だと気づきにくい?
混乱させて責任をこちらに押しつける仕組みがあり、周りの人とのつながりも少しずつ断たれていくからなんです。
研究
どんな研究?
2016〜2026年の関連論文31本をまとめ、親密な関係での心理的・社会的なコントロールを整理したレビュー(研究のまとめ)です。
結果
数字で見ると
31本のほぼすべてで、ガスライティングは混乱させて責任を押しつける仕組みとして現れていました。相手を怒らせないよう、自分の行動を見張ってしまうことも報告されています。
まだわからないこと
数字のないまとめ
31本の研究を言葉で整理したスコーピングレビューで、効果の大きさは数字で比べていません。女性が被害を受ける場面に絞っているので、男性の被害については別に調べる必要があります。
出典: Duque-Sánchez, E., et al. (2026). Psychological and Social Coercion of Women in Interpersonal Power Contexts: A Scoping Review. Behavioral Sciences
メタ分析
手を上げない相手なら安心?
研究では、相手を操ろうとする性格傾向は、身体的な暴力より、心理的な暴力やネット上の暴力と結びついていました。
研究
どんな研究?
19件の研究・9,464人分のデータで、相手を道具のように操ろうとする性格傾向(マキャベリアニズム)と、恋人への暴力の関連をまとめて分析しました。
結果
数字で見ると
全体の相関は.16。ネット上の暴力.25、心理的な暴力.20と比較的強く、身体的な暴力とは意味のある関連が見られませんでした。どれも弱い関連です。
まだわからないこと
まだわからないこと
元の研究は自己申告で一時点のものばかりなので、性格が暴力の原因かはわかりません。この傾向だけで目の前の相手を危険だと決めることはできません。
出典: White LK, Valos N, de la Piedad Garcia X, Willis ML (2024). Machiavellianism and Intimate Partner Violence Perpetration: A Systematic Review and Meta-Analysis. Trauma, Violence, & Abuse
観察研究
謝っては同じことを繰り返す相手は?
研究では、傷つけたあと謝り、変わると約束する流れの繰り返しが、加害する側の行動パターンとして報告されています。
研究
どんな研究?
性的マイノリティの当事者18人、農村部に住む女性11人、支援者24人に聞き取りをした質的研究です。
結果
数字で見ると
傷つける→謝る→やり直しを約束する、の繰り返しが報告されました。病気を装うなど健康状態や、信仰・子育ての事情を持ち出して罪悪感を抱かせる例もありました。
まだわからないこと
まだわからないこと
カナダ・アルバータ州の少人数への聞き取りで、数でどのくらい多いかはわかりません。ほかの人たちに同じように当てはまるかも確かめられていません。
出典: Kurbatfinski S, et al. (2025). "Don't You Love Me?" Abusers' Use of Shame-to-Guilt to Coercively Control 2SLGBTQQIA+ Individuals and Rural Women Experiencing Intimate Partner Violence. Women's Health
メタ分析
支配される関係は心にどう響く?
研究では、支配的な関係を経験した人ほど、トラウマ後のストレス症状や抑うつと、中くらいの強さで結びついていました。
研究
どんな研究?
68件の研究を対象にした系統的レビューのうち、45件のデータをまとめてメタ分析しました。
結果
数字で見ると
支配的な関係(強制的支配)の経験は、心的外傷後ストレス(r=.32)、抑うつ(r=.27)と結びついていました。ほかの心理的な暴力とも同じくらいの強さでした。
まだわからないこと
まだわからないこと
まとめた研究はどれも観察研究で、因果は直接わかりません。英語の論文だけで、複雑性PTSDとの関係は研究が1件しかなく、まとめられませんでした。
出典: Lohmann S, Cowlishaw S, Ney L, O'Donnell M, Felmingham K (2024). The Trauma and Mental Health Impacts of Coercive Control: A Systematic Review and Meta-Analysis. Trauma, Violence, & Abuse
レビュー
殴らなくても「支配」は危ない?
相手を支配する度合いが、身体的な暴力だけに結びつけられていたさまざまな悪い結果を予測すると報告されています。
研究
どんな研究?
強圧的コントロール(交友を狭める、監視するなどの支配のパターン)に関する研究を振り返った文献レビューです。
結果
わかったこと
その「悪い結果」には、別れたあとの暴力や性的暴力も含まれるとされました。殴られていなくても、支配の強さそのものが大切な手がかりになります。
まだわからないこと
国や測り方でちがう
イギリスの法律をめぐる議論が中心のレビューで、数字でまとめたメタ分析ではありません。支配の強さの測り方はまだ定まっておらず、研究ごとに対象や方法も異なります。
出典: Stark & Hester (2019). Coercive Control: Update and Review. Violence Against Women
観察研究
孤独感はその後の被害とつながる?
13〜14歳ごろの孤独感が、18〜21歳での交際相手からの暴力・被害の経験と関連していました。
研究
どんな研究?
イギリスの出生コホート調査(ALSPAC)で女性2,127人・男性1,145人を追い、さらに若い女性17人に話を聞いた研究です。
結果
数字で見ると
12歳までの被害経験が思春期の孤独感と関連し、その孤独感がのちの被害と関連していました。孤立や孤独感が、被害につながる経路の一つである可能性が示されています。
まだわからないこと
原因とまでは言えない
追跡データでの関連で、孤独感が被害を直接引き起こすとまでは言えません。イギリスの1地域の若者が対象で、聞き取りも17人と少なく、ほかの国や年代で同じかはわかりません。
出典: Barnes, Szilassy, Herbert, Heron, Feder, Fraser, Howe, & Barter (2022). Being silenced, loneliness and being heard: understanding pathways to intimate partner violence & abuse in young adults. BMC Public Health
レビュー
ガスライティングは性格だけの問題?
ガスライティングは、個人の性格の問題としてだけでなく、力関係の不均衡のなかで起きる心理的虐待の一種と位置づけられています。
研究
どんな研究?
DVを事例として、ガスライティングがどんな仕組みで働くかを整理した社会学の理論論文です。
結果
わかったこと
加害者は、性別にまつわる思い込みや社会の中の不平等を使って、相手に「自分の感覚のほうがおかしい」と感じさせるとされます。混乱するのは、あなたが弱いからではありません。
まだわからないこと
理論の整理
社会学の理論を示した論文で、どれくらいの人に起きているかなどの数字は示していません。心理学的な診断の基準でもなく、DVの事例が中心です。
出典: Sweet (2019). The Sociology of Gaslighting. American Sociological Review
観察研究
「私が悪かった」には2種類ある?
自分を責める気持ちには「行動を責める」と「性格を責める」の2種類があります。落ち込みのある学生には、性格を責める自責が多く見られました。
研究
どんな研究?
2つの研究を報告したものです。落ち込み(抑うつ)のある女子大学生とない学生を比べ、さらに性被害の支援機関にも調査しました。
結果
数字で見ると
落ち込みのある学生は性格を責める自責が多く、行動を責める自責には差がありませんでした。性被害の支援機関への調査では、被害者に最も多い反応は行動を責める自責でした。
まだわからないこと
古い研究
1979年の研究で、対象は女子大学生と支援機関への調査です。自責の種類を区別した研究で、どちらの自責が回復に役立つかまでは確かめていません。
出典: Janoff-Bulman (1979). Characterological versus behavioral self-blame: inquiries into depression and rape. Journal of Personality and Social Psychology
観察研究
自分を責める気持ちは何と関係する?
パートナーからの暴力を経験した女性では、自分を責める気持ちが強い人ほど、自己肯定感が低くなっていました。
研究
どんな研究?
パートナーからの暴力を経験した女性80人を調べた研究です。身体的・心理的・性的な暴力のそれぞれで、自責との関係を見ました。
結果
数字で見ると
どの種類の暴力でも、自責が強い人ほど自己肯定感が低めでした。身体的な暴力では、暴力の多さと自責の強さが重なると、PTSDの症状と強く結びついていました。
まだわからないこと
人数が少ない
80人と人数が少なく、一時点の相関の研究です。自責が原因で自己肯定感が下がるのか、その逆かはわかりません。心理的・性的な暴力では、PTSDとの関係ははっきりしませんでした。
出典: Reich et al. (2015). Does self-blame moderate psychological adjustment following intimate partner violence? Journal of Interpersonal Violence
観察研究
自分をいたわる人は自責が弱い?
自分をいたわる「セルフコンパッション」が高い人ほど、2種類の自責がどちらも弱く、PTSDの症状も軽い傾向がありました。
研究
どんな研究?
性被害を経験した成人女性207人に、オンラインと紙で調査した研究です。セルフコンパッション、自責、心の症状の関係を調べました。
結果
数字で見ると
セルフコンパッションが高い人ほど、行動を責める自責も性格を責める自責も弱く、PTSDの症状が軽くなっていました。うつの重さとも関連していました。
まだわからないこと
高めれば減るかは未確認
一時点の調査で、セルフコンパッションを高めれば自責が減るとまでは確かめていません。協力を申し出た女性207人が対象で、被害を受けた人全体を代表するとは限りません。
出典: Hamrick & Owens (2019). Exploring the mediating role of self-blame and coping in the relationships between self-compassion and distress in females following the sexual assault. Journal of Clinical Psychology
メタ分析
自分へのやさしさと心の不調の関係は?
自分へのやさしさが高い人ほど、心の不調が少ない向きの関連がありました。関連の強さは r = −0.54 で、大きな効果量とされています。
研究
どんな研究?
14研究・20サンプルをまとめたメタ分析です。セルフコンパッションと、心の不調(精神的な症状)との関連の強さを調べました。
結果
数字で見ると
関連の強さは r = −0.54 で、大きな効果量とされました。マイナスの値は、自分へのやさしさが高い人ほど心の不調が少ないという向きです。出版バイアスは見られませんでした。
まだわからないこと
どちらが原因か
まとめた研究はどれも一時点の関連で、どちらが原因かまではわかりません。研究ごとのばらつきは大きく、14研究と数も多くありません。どの研究も同じ1つの尺度で測っています。
出典: MacBeth & Gumley (2012). Exploring compassion: a meta-analysis of the association between self-compassion and psychopathology. Clinical Psychology Review
観察研究
関係の行く末、当てやすいのは誰?
交際が続くかどうかの予測は、本人よりルームメイトや親のほうが当たりやすい傾向がありました。迷ったら、信頼できる人の目を借りるのも手です。
研究
どんな研究?
大学生とそのルームメイト、親に、学生の交際がどのくらい続くかを予測してもらい、追跡した2つの研究です。
結果
数字で見ると
本人は関係の良い面に目を向け、より楽観的で自信もありましたが、予測の当たり方はルームメイトや親より低い傾向でした。一方、本人が答えた関係の質は、1年後に続いているかをよく予測していて、本人の感覚が無意味なわけではありません。
まだわからないこと
どこまで当てはまる?
大学生の交際を見た2つの研究で、結婚や長い関係にも同じことが言えるかはわかりません。周りの予想が当たりやすい理由も、ここでは確かめきれていません。
出典: MacDonald & Ross (1999). Assessing the Accuracy of Predictions about Dating Relationships. Personality and Social Psychology Bulletin
観察研究
相手のスマホを確かめる行動、誰に多い?
不安・抑うつ・ストレスといった心の苦痛が強い人ほど、相手のSNSやスマホを同意なく確認するなどの加害が多い傾向がありました。
研究
どんな研究?
スペインの1つの大学に通う18〜25歳の学生336人を対象に、同意のない確認「サイバーコントロール」などの被害と加害を調べた研究です。
結果
数字で見ると
女性は男性より、サイバーコントロールの被害・加害ともに高いスコアでした。心の苦痛と加害の結びつきは、恋愛についての思い込みが強い人で目立っていました。一時点の調査です。
まだわからないこと
どこまで言える?
スペインの1つの大学の学生336人の一時点の調査で、心の苦痛が監視を生んだのかはわかりません。苦痛と加害の関連は、恋愛の思い込み(ロマンチック・ラブ神話)が強い人で目立っていました。
出典: Arévalo-Martínez et al. (2026). Cybercontrol and Cyberaggression in Young Adults' Romantic Relationships. Healthcare (Basel)
レビュー
お金の管理も暴力になる?
相手の収入や口座を一方的に管理・制限する「経済的DV(経済的虐待)」は、パートナーからの暴力の一つの形で、見えにくいとされています。
研究
どんな研究?
6大陸にわたる46本の査読論文をレビューした研究です。経済的DV(経済的虐待)がどう捉えられてきたかを整理しました。
結果
数字で見ると
経済的DVは、身体的な暴力に目が向きがちな中で、見過ごされやすい「見えない」暴力だと指摘されています。定義や測定方法が研究ごとに異なり、国際的に統一されていない点が課題です。
まだわからないこと
どこまで言える?
論文を整理したレビューで、どのくらいの人が経験しているかの数字は出していません。研究ごとに定義や測り方が違い、国や文化による違いもまだ整理しきれていません。
出典: Postmus, Hoge, Breckenridge, Sharp-Jeffs, & Chung (2020). Economic abuse as an invisible form of domestic violence: A multicountry review. Trauma, Violence, & Abuse
レビュー
嫉妬は「愛情の証」なの?
嫉妬が「愛情の表れ」とされる地域では、その認識が相手の行動を制限する根拠として使われていたと報告されています。
研究
どんな研究?
エクアドル、エチオピア、ルワンダ、タンザニア、ウガンダの質的研究5件を統合したメタ統合(メタエスノグラフィー)です。
結果
数字で見ると
エクアドルでは嫉妬が愛情の表れとされ、妻の行動を制限する根拠に使われていました。ルワンダ・タンザニアでは、より多くの場合「関係にとって有害なもの」とされていました。質的研究の統合で、頻度や強さを数値で比べたものではありません。
まだわからないこと
どこまで言える?
同じ研究グループによる5つの質的研究をまとめたもので、エクアドルと東アフリカの国が対象です。頻度を数で比べてはおらず、日本でも同じ見方があるかはわかりません。
出典: Pichon et al. (2025). The role of jealousy and infidelity in intimate partner violence against women: a qualitative meta-synthesis of five studies. BMC Public Health
メタ分析
特に注意したい相手の行動は?
交際相手による深刻な被害の強い危険因子として、相手の支配的なふるまいと、危害を加えるという脅しが挙がりました。
研究
どんな研究?
交際相手による殺人の危険因子を比べるため、17件の研究(148の効果量)をまとめたメタ分析です。
結果
数字で見ると
銃を手にできること、首を絞めた過去、性暴力、武器での脅しと並んで、支配的なふるまいと危害の脅しが強い危険因子でした。
まだわからないこと
一人の危険度はわからない
17件の研究は国や対象がばらばらで、男性から女性への被害に限られます。集団の傾向で、目の前の一人の危険度を判定する道具ではありません。不安なときは専門の相談窓口へ。
出典: Spencer & Stith (2020). Risk Factors for Male Perpetration and Female Victimization of Intimate Partner Homicide: A Meta-Analysis. Trauma, Violence, & Abuse
ランダム化比較試験
安全計画のアプリは役に立つ?
安全計画アプリを使ったグループでは、試した安全行動のうち「役に立った」割合が増えるほど、被害の得点が下がっていました。
研究
どんな研究?
交際相手からの暴力を経験した女子大学生346人を、安全計画アプリ「myPlan」と一般的なウェブの安全情報のグループに分け、12か月追った研究です。
結果
数字で見ると
どちらのグループも12か月で被害と抑うつは減りました。アプリのグループでより大きく改善したのは、生殖に関する強要など一部の指標に限られます。
まだわからないこと
日本の大学生にも?
アメリカ2州・41大学の女子大学生346人の結果で、そのまま日本や社会人に当てはまるとは限りません。被害の量は本人の申告で測っています。
出典: Glass, Clough, Messing, et al. (2022). Longitudinal Impact of the myPlan App on Health and Safety Among College Women Experiencing Partner Violence. Journal of Interpersonal Violence
観察研究
最初の好印象はずっと続く?
自分を高く見せる傾向が強い人は、最初は感じがよく有能だと評価されましたが、7週間後には否定的に評価されていました。
研究
どんな研究?
4〜6人のグループが20分の話し合いを7回行い、1回目と7回目にお互いを評価した2つの研究です。
結果
数字で見ると
1回目の好印象は、7回の話し合いを経て否定的な評価に変わっていました。恋愛ではなく、グループでの話し合いの場面を調べた研究です。
まだわからないこと
恋愛の場面ではない
学生のグループ討論を7週間見た2つの研究です。恋人や職場で同じことが起きるかは調べていません。自分を高く見せる人も、自尊心は高いと答えていました。
出典: Paulhus (1998). Interpersonal and intrapsychic adaptiveness of trait self-enhancement: A mixed blessing? Journal of Personality and Social Psychology
観察研究
離れにくさと共感の関係は?
受けた暴力の量そのものより、相手の気持ちを感じ取り理解しようとする「共感性」の高さが、相手への結びつきの強さと関連していました。
研究
どんな研究?
ナイジェリアの支援機関を訪れた18〜61歳の女性345人を調べた研究です。
結果
数字で見ると
受けた暴力の量そのものは、結びつきの強さと目立った関連がありませんでした。共感性が高い人ほど結びつきが強く、離れにくさは意志の弱さだけでは説明できなさそうです。
まだわからないこと
1つの国の一度の調査
ナイジェリアの支援機関を訪れた女性345人に一度聞いた調査で、因果はわかりません。ほかの国や、支援機関につながっていない人に当てはまるかも不明です。
出典: Effiong, Ibeagha, & Iorfa (2022). Traumatic bonding in victims of intimate partner violence is intensified via empathy. Journal of Social and Personal Relationships
レビュー
ラブボミングはどこまでわかっている?
ラブボミングなどの行動は、一般には広く語られる一方、学術文献ではまだほとんど扱われていないと指摘されています。
研究
どんな研究?
「ナルシシスティックな虐待サイクル」として語られる行動について、研究の必要性を訴えた論説(エディトリアル)です。
結果
わかったこと
著者らは、定義・境界・特徴・対処法を研究で詰める必要があるとし、臨床家には注意を呼びかけています。
まだわからないこと
データのない論説
これは意見を述べた論説で、データを集めた研究ではありません。ラブボミングがどれほど起きているか、どう見分けられるかは、まだ研究で示されていません。
出典: Ameen, Chandran, Chatterjee, Chatterjee, & Sarkhel (2025). Narcissistic Abuse Cycle Deserves Clinical and Research Attention. Indian Journal of Psychological Medicine
観察研究
支配的な関係はどう始まる?
支配的な関係を経験した女性の語りでは、関係が「ラブボミング」から始まり、段階的にエスカレートしていく過程が描かれていました。
研究
どんな研究?
オーストラリアの研究者らが、支配的な関係(コアーシブ・コントロール)を、被害を受けた女性の一人語りの劇として描いた研究です。
結果
わかったこと
関係は、生殖に関する強要、孤立、テクノロジーを使った虐待へと段階的に進み、警察の介入に至っていました。
まだわからないこと
1つの物語
劇の形にした1つの事例で、数を数えた研究ではありません。ラブボミングから始まる関係がどれくらい支配に進むのかは、わかっていません。
出典: Rose, McCallum, Tsantefski, & Rathus (2024). Healthcare and legal systems responses to coercive control: an embodied performance of one woman's experience. Health Sociology Review