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EVIDENCE / お酒の常識
お酒の常識の研究まとめ
お酒の常識について、研究でわかったことを6本、元の論文の出典つきでまとめています。わかったことだけでなく、研究の限界や「まだわからないこと」も書いています。
メタ分析
よく聞く説
少し飲む人は、まったく飲まない人より長生きする。そんな話を聞いたことがあるよね。昔の研究では、少量なら体にいいように見えるグラフがよく出ていた。
調べた人
107の追跡研究、480万人分をまとめ直した
2023年、ジャオらは1980〜2021年に出た107の追跡研究(参加者約484万人、死亡約43万人)を集めた。病気でお酒をやめた人が「飲まない人」に混ざる偏りなどを調整して、飲む量と死亡リスクを比べた。
ほんとのところ
少量でも、長生きにはつながっていなかった
偏りを調整すると、たまに飲む人も1日24g以下の少量の人も、一生飲まない人と比べて死亡リスクがはっきり低いとは言えなかった。1日45g以上では約1.2〜1.35倍に上がり、女性は男性より少ない量から上がっていた。
まだわからないこと
追跡して比べた研究を集めたもの
元はどれも観察研究で、飲む量は自己申告。調整しきれない違いが残っている可能性がある。「少量なら害がない」と言えたわけでもなく、病気ごとの影響もこのまとめだけではわからない。
出典: Zhao et al., "Association Between Daily Alcohol Intake and Risk of All-Cause Mortality" (JAMA Network Open, 2023)
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観察研究
よく聞く説
赤ワインに入っているポリフェノールの一種「レスベラトロール」が、心臓や長生きにいいと聞くよね。動物の研究で寿命がのびた話が広まって、人気になった。
調べた人
イタリア・キャンティ地方の高齢者783人
2014年、センバらはワインの産地キャンティの2つの村に住む65歳以上の783人を、約9年追いかけた。尿の中のレスベラトロールの量を測り、食事でとっている量の目安にした。
ほんとのところ
多い人も少ない人も、差がなかった
量で4つに分けると、亡くなった人の割合は34.4%・31.6%・33.5%・37.4%で、はっきりした差はなかった。炎症の値や、心臓・血管の病気、がんとの関係も見られなかった。
まだわからないこと
ワインそのものを調べたわけではない
測ったのはふだんの食事でとるレスベラトロールの量で、ワインを飲む量ではない。追跡して比べた研究で、対象はイタリアの1地域の高齢者だけ。サプリのような多い量の話も別になる。
出典: Semba et al., "Resveratrol Levels and All-Cause Mortality in Older Community-Dwelling Adults" (JAMA Internal Medicine, 2014)
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レビュー
よく聞く説
少し飲んだだけで顔が真っ赤になる人がいるよね。「飲めば強くなる」と言われることもあるけど、赤くなる体質とお酒の害には関係があるんだろうか。
調べた人
日米の研究者が、これまでの研究を整理した
2009年、アメリカ国立衛生研究所のブルックスらと日本の久里浜の研究者が、顔が赤くなる体質と食道がんの研究を読み比べて整理した。日本・中国・韓国の人の約36%が、飲むと顔が赤くなるという。
ほんとのところ
分解する酵素が弱く、がんのリスクが高い
赤くなる主な理由は、お酒からできる毒性のあるアセトアルデヒドを分解する酵素ALDH2が弱い体質。この体質の人が飲むと食道がんのリスクがかなり高く、大量に飲む人の追跡では喉や食道のがんが約12倍だった。
まだわからないこと
量ごとのリスクは、これだけではわからない
これは数字でまとめた分析ではなく、研究を読み比べた整理。約12倍は大量に飲む人の数字で、ふだん少し飲む人に同じ倍率が当てはまるわけではない。赤くならない理由が体質以外のこともある。
出典: Brooks et al., "The Alcohol Flushing Response: An Unrecognized Risk Factor for Esophageal Cancer from Alcohol Consumption" (PLoS Medicine, 2009)
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レビュー
よく聞く説
飲む前に飲むドリンク、翌朝のサプリ、昔ながらの食べ物。二日酔いに効くと言われるものはたくさんあるよね。じゃあ、ちゃんと試した研究ではどうだったんだろう。
調べた人
偽物と比べた21の試験を集めた
2022年、ロンドンのロバーツらは、健康な大人に成分を飲んでもらい、偽物(プラセボ)と比べたランダム化試験を集めた。見つかったのは21本、参加者は合わせて386人だった。
ほんとのところ
効くと言える根拠は、とても弱い
21本はすべて違う成分を試していて、同じものを確かめた研究が2本もなかった。個々の試験で症状が軽くなった報告はあるけど、どれも根拠の質は「とても低い」と判定された。
まだわからないこと
小さな試験が1本ずつしかない
どの成分も小さな試験1本だけで、追試されていない。水分をとるなど、成分を飲む以外の方法はこのまとめの対象外。数字でまとめる分析はできず、研究を整理したものにとどまる。
出典: Roberts et al., "The efficacy and tolerability of pharmacologically active interventions for alcohol-induced hangover symptomatology: a systematic review of the evidence from randomised placebo-controlled trials" (Addiction, 2022)
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ランダム化比較試験
よく聞く説
ビールのあとにワイン、日本酒と、種類を混ぜて飲むと悪酔いする。そう言われるよね。ドイツにも「ビールのあとのワインはいいけど、逆はだめ」ということわざがあるらしい。
調べた人
ドイツで90人に、順番を変えて飲んでもらった
2019年、ドイツのケッヒリングらは19〜40歳の90人を3つのグループに分けた。ビール→ワイン、ワイン→ビール、どちらか1種類だけで、息のアルコール濃度が0.11%になるまで飲み、翌日の二日酔いを比べた。
ほんとのところ
種類も順番も、二日酔いは変わらなかった
ビールとワインを混ぜても、順番を変えても、1種類だけでも、二日酔いの重さにはっきりした差はなかった。強く関係していたのは、本人が感じた酔いの深さと、吐いたかどうかだった。
まだわからないこと
ビールとワインだけの話
調べたのはビールとワインの2種類だけで、日本酒や焼酎などは含まれない。参加者は平均24歳の若い人で、何を飲んでいるか本人もわかっていた。かなり酔う量での結果で、少量の場合は別かもしれない。
出典: Köchling et al., "Grape or grain but never the twain? A randomized controlled multiarm matched-triplet crossover trial of beer and wine" (The American Journal of Clinical Nutrition, 2019)
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メタ分析
よく聞く説
ビール好きはお腹が出る、とよく言われるよね。一方で「太るのはビールじゃなくておつまみのせい」という話もある。ビールとお腹の太さは、本当に関係があるんだろうか。
調べた人
47の研究を集めてまとめた
2013年、デンマークとオランダのベンゼンらは、ビールと肥満について調べた観察研究35本と実験12本を集めた。お腹まわり(腹囲)と体重の両方について、結果を整理し数字でまとめた。
ほんとのところ
1日500mLを超えると、お腹が出やすいかも
1日500mL未満のふつうの量では、太るかどうかを判断できるだけの根拠がなかった。500mLを超えると、お腹まわりの太さと関係しているかもしれない。男性の実験では、アルコール入りのビールで体重が平均0.73kg増えた。
まだわからないこと
実験の質が低く、男女で結果がちがう
実験は質の低いものが多く、お酒をまったく飲まない場合と比べた実験では体重の増加は見られなかった。女性では結果がそろっていない。観察研究は、一緒に食べるものや生活の違いを分けきれない。
出典: Bendsen et al., "Is beer consumption related to measures of abdominal and general obesity? A systematic review and meta-analysis" (Nutrition Reviews, 2013)