SEADICE / EVIDENCE / 記憶のしくみ

EVIDENCE / 記憶のしくみ

記憶のしくみの研究まとめ

記憶のしくみについて、研究でわかったことを11本、元の論文の出典つきでまとめています。わかったことだけでなく、研究の限界や「まだわからないこと」も書いています。

実験

忘却曲線は、130年後に再現できる?

できました。学んだ直後に急に忘れ、その後はゆるやかになるという、エビングハウスの結果が成功裏に再現されました。

研究

どんな研究?

被験者1人が約70時間かけて無意味な綴りの単語リストを覚え、20分、1時間、9時間、1日、2日、31日後に覚え直す節約法でテストしました。

結果

分かったこと

結果は1880年のエビングハウスの元データとよく似ていました。さらに、24時間の時点で少し上向く可能性も指摘されました。被験者は1人です。

出典: Murre & Dros, "Replication and Analysis of Ebbinghaus' Forgetting Curve" (PLOS ONE, 2015)

実験

覚えたい言葉は、書くより描くほうが残る?

絵に描いた単語は、書いた単語より思い出しやすくなります。書き写すより、自分で描く作業が記憶を助けます。

研究

どんな研究?

7つの実験で、参加者に単語を、描く、または書くのどちらかで覚えてもらい、自由再生テストで比べました。深い処理や視覚イメージなど別の説明も検証しました。

結果

分かったこと

7実験すべてで、描いた単語のほうが書いた単語より多く再生されました。時間が短い、リストが長いなどの条件でも効果は残りました。

出典: Wammes, Meade & Fernandes, "The drawing effect: Evidence for reliable and robust memory benefits in free recall" (Quarterly Journal of Experimental Psychology, 2016)

あわせて読む読むより自分で作ると覚えやすい?自分で作る・描くなど、手を動かすほど記憶に残る

実験

復習の間に一晩寝ると、覚えやすくなる?

学習と復習の間に睡眠をはさむと、覚え直しが楽になり、長期の記憶も良くなりました。直後だけでなく数か月後も差が出ました。

研究

どんな研究?

40人が12時間あけて2回、外国語の単語を完璧に答えられるまで練習。半数は朝と夜(同じ日)、残り半数は夜に学んで寝て翌朝に復習。1週間後と6か月後に再テスト。

結果

数字で見ると

睡眠をはさんだ群は、2回目の練習量が約半分で済みました。1週間後も6か月後も、成績が良好でした。人数は40人と小規模です。

出典: Mazza et al., "Relearn Faster and Retain Longer: Along With Practice, Sleep Makes Perfect" (Psychological Science, 2016)

実験

質問の言い方だけで、記憶は変わる?

変わります。同じ事故映像でも、質問の動詞が違うだけで、思い出す車の速度が変わりました。目撃証言が揺らぐ古典的な発見です。

研究

どんな研究?

大学生45人が交通事故の短い映像を7本見て、その後「車が(smashed/hit/contacted など)したとき、どれくらいの速度だったか」を推定しました。

結果

数字で見ると

「激突(smashed)」と尋ねられた群の平均は時速40.8マイル、「接触(contacted)」は31.8マイルでした。映像は同じなのに差が出ました。

出典: Loftus & Palmer, "Reconstruction of automobile destruction: An example of the interaction between language and memory" (Journal of Verbal Learning and Verbal Behavior, 1974)

あわせて読む偽の映画を見せると偽の記憶はできる?質問の言い方や偽の映像で、記憶は後から作り変わる

メタ分析

読むより自分で作ると覚えやすい?

答えを自分で生み出すと、ただ読むより記憶に残りやすくなります。これは「生成効果」と呼ばれる安定した現象です。勉強は、答えを自分で考えて出す形にすると効果的です。

研究

どんな研究?

情報を自分で生成した場合と、読むだけの場合の記憶を比べた86件の研究、445の効果量を統合したメタ分析です。86件を横断して効果の大きさを調べました。

結果

数字で見ると

全体の効果量は0.40で、読むだけに比べて標準偏差の約半分ほど記憶が良くなりました。条件による差も大きいです。ただし条件によってばらつきがあります。

出典: Bertsch, Pesta, Wiscott & McDaniel, "The Generation Effect: A Meta-Analytic Review" (Memory & Cognition, 2007)

あわせて読む覚えたい言葉は、書くより描くほうが残る?自分で作る・描くなど、手を動かすほど記憶に残る

ランダム化比較試験

60代以上で新しい機器を学べる?

学べていた。パソコン初心者の60〜90歳がタブレットを学んだ実験では、使い方を覚えながら、記憶と処理の速さの成績も比較群より上がっていた。

研究

どんな研究?

米国テキサス州の60〜90歳のパソコン初心者が、タブレットの使い方を週15時間以上、約3か月学んだ。

結果

数字で見ると

参加は54人で、学んで最後まで残ったのは18人。比較群は別の研究の参加者から選んだもので人数も少ない。注意の切り替えでは差がなかった。

出典: Chan, Haber, Drew & Park, "Training Older Adults to Use Tablet Computers: Does It Enhance Cognitive Function?" (The Gerontologist, 2016)

観察研究

ナビをよく使う人は道を覚えにくい?

その傾向があった。これまでナビを使ってきた量が多い人ほど、仮想の街でナビなしに道を覚える成績が低くなっていた。

研究

どんな研究?

カナダの19〜35歳の運転者50人に、ナビの使用量を聞き、仮想の街で道を覚える課題をしてもらった。3年後に13人を再検査した。

結果

数字で見ると

3年の間にナビを多く使った人ほど、道の記憶の成績が大きく下がった。方向感覚に自信がない人がナビを多く使う関係は見られなかった。追跡は13人と少ない。

出典: Dahmani & Bohbot, "Habitual use of GPS negatively impacts spatial memory during self-guided navigation" (Scientific Reports, 2020)

あわせて読む「あとで見返せる」と思うと覚えなくなる?メモやナビに頼れると思うと、自分では覚えにくくなる

実験

ど忘れした言葉は、またど忘れしやすい?

しやすかった。1回目にど忘れした単語は1週間後も再びど忘れしやすく、思い出せないまま答えを見た単語で特に繰り返しが多かった。

研究

どんな研究?

カナダの大学生40人が、まれな単語の定義70問を読んで単語を答えた。1週間後に同じテストをし、同じ単語でど忘れが再び起きるかを調べた。

結果

数字で見ると

1回目のど忘れの27%が再発した。答えを見た単語は41%、自力で思い出せた単語は15%。同じ研究グループによる再現で、別グループの追試はない。

出典: Oliver & Humphreys, "Phonological interlopers tend to repeat when tip-of-the-tongue states repeat" (Frontiers in Psychology, 2019)

実験

勉強する部屋を変えると覚えやすい?

この実験では、同じ単語を2つの違う部屋で覚えた学生の方が、同じ部屋で2回覚えた学生より多くの単語を思い出した。

研究

どんな研究?

米国の大学生が40語の単語リストを3時間あけて2回覚え、さらに3時間後、どちらとも違う3つ目の部屋で思い出した(最初の実験は16人)。

結果

数字で見ると

思い出せた単語は、同じ部屋の組が平均15.9語、違う2部屋の組が平均24.4語。ただし人数が少なく、部屋ごとに単語の見せ方なども違っていた。

出典: Smith, Glenberg & Bjork, "Environmental context and human memory" (Memory & Cognition, 1978)

実験

「あとで見返せる」と思うと覚えなくなる?

この実験では、メモを見返せると思っていた子どもと大人は、使えないと知らされていた人より思い出せた単語が少なく、覚える工夫も少なかった。

研究

どんな研究?

10〜11歳の子ども40人と大人40人が単語リストを覚えた。最後の回だけメモは使えず、それを知らされた人と知らされない人を比べた。

結果

数字で見ると

子ども40人・大人40人のどちらでも、メモに頼れると思っていた人の方が思い出せた単語が少なかった。短い実験課題で、長期的な影響は調べていない。

出典: Goldberg & Magen, "Cognitive offloading reduces internal memory processing in children" (Scientific Reports, 2026)

あわせて読むナビをよく使う人は道を覚えにくい?メモやナビに頼れると思うと、自分では覚えにくくなる

実験

衝撃的な出来事の記憶は正確なのか?

9.11を知った瞬間の記憶は、1年たたずに中身がかなり変わっていた。それでも本人の「正確に覚えている」という確信は高いままだった。

研究

どんな研究?

米国7都市の3,000人超に、9.11の1週間後・11か月後・35か月後の3回、事件を知った瞬間の状況を尋ね、最初の回答と比べた。

結果

数字で見ると

11か月後に最初の回答と一致したのは平均63%、35か月後は57%。確信は5段階で4.41と高いまま。一致度は事実の正確さそのものではない。

出典: Hirst, Phelps, Buckner et al., "Long-term memory for the terrorist attack of September 11: Flashbulb memories, event memories, and the factors that influence their retention" (Journal of Experimental Psychology: General, 2009)

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