もとにした研究 9本
このツールの手順は、次の9本の研究をもとにしています。効かなかった結果(研究8)も、まだわからないことも、省略せずに載せています。どの研究も、SEADICEが元の論文で確かめたEVIDENCE「姿勢と自信」と同じ内容です。
- 効いていたのは「縮こまらないこと」。普通の姿勢より大きく広げても、差はほぼなかった(研究1)
- 背すじを伸ばすと、ストレス場面や落ち込みのあとに気分が保たれやすい(研究2・3・4)
- パワーポーズで「力がある感じ」は強まる。ホルモンと行動は変わらなかった(研究7・8)
- どれも実験室で短い時間の結果。毎日続けたときの効果は、まだ調べられていない
研究 1 · メタ分析 · Elkjærら(2022)
よく聞く説
胸を張って堂々とすると、前向きになれる?
「胸を張って」とはよく言われるよね。体を大きく広げる姿勢をとると、気分や行動まで前向きになる、という話。実際はどうなんだろう。
調べた人
73の実験を数字でまとめた
エルキャルたちは5,819件の文献を探し、姿勢を「広げる」か「縮こまる」に変えて、気分・ホルモン・行動を測った73の実験を選んで、効果の大きさをまとめた。
ほんとのところ
効いていたのは「縮こまらないこと」
広げる姿勢と縮こまる姿勢の差は、はっきり出た。でも普通の姿勢と比べると、広げてもほぼ差はなかった。差を生んでいたのは、縮こまると気分や行動が下がるほうだった。
まだわからないこと
普通の姿勢と比べた実験はまだ少ない
著者たちは、普通の姿勢のグループを置いた実験をもっと増やすこと、ホルモンの測り方を見直すことを求めている。実験の場面での話で、毎日の暮らしで続くかはわからない。
出典: Elkjær, Mikkelsen, Michalak, Mennin & O'Toole, "Expansive and Contractive Postures and Movement: A Systematic Review and Meta-Analysis of the Effect of Motor Displays on Affective and Behavioral Responses" (Perspectives on Psychological Science, 2022)
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研究 2 · ランダム化比較試験 · Nairら(2015)
結論
姿勢を正すと、ストレス場面で気持ちが保てる?
ストレスのかかるスピーチ中に背筋を伸ばして座っていた人は、猫背の人より自尊心が保たれ、気分も良好だった。
研究
どんな研究?
オークランド大学の研究チームが、74人をテープで背中を固定して直立姿勢か猫背姿勢のどちらかに無作為に割り当て、人前でのスピーチ課題中の気分などを比べた。
結果
数字で見ると
直立群は猫背群より自尊心が高く、気分が良く、恐怖感が低かった。猫背群はスピーチで一人称単数やネガティブな感情語を多く使った。小規模な実験で長期効果は不明。
まだわからないこと
実験室での1回の話
オークランド大学の実験で、74人がテープで姿勢を固定して1回スピーチしたときの結果。ふだんの姿勢を変えて長く効くかは調べていない。体の反応では、背筋を伸ばした人のほうが脈圧(血圧の上と下の差)が高かった。
出典: Nair, Sagar, Sollers, Consedine & Broadbent, "Do Slumped and Upright Postures Affect Stress Responses? A Randomized Trial" (Health Psychology, 2015)
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研究 3 · ランダム化比較試験 · Wilkesら(2017)
素朴な疑問
気分が沈みがちな人も、背筋を伸ばすと違う?
背筋を伸ばすと気分が保てる、という実験は健康な人で多い。じゃあ、気分の落ち込みが続いている人ではどうなんだろう。
調べた人
61人を2つの姿勢にくじで分けた
2017年、ウィルクスたちは、軽〜中くらいのうつ症状がある地域の人61人を、いつもの姿勢か背筋を伸ばす姿勢にくじで分けた。テープで姿勢を保ち、人前でのスピーチ課題をしてもらった。
結果
元気な気分が増え、自分のことばかり話さなくなった
背筋を伸ばした人は、活気のある前向きな気分が高まり、疲れた感じは少なかった。話す言葉の数も多く、「私」という言葉が少なかった。肩の角度がまっすぐな人ほど不安も低かった。
まだわからないこと
短い1回の実験で、診断を受けた人ではない
著者たちも「予備的な研究」としている。姿勢を変えたのは短い時間だけで、参加者は診断を受けた患者ではない。長く続けたときや、治療の場面でどうかは調べていない。
出典: Wilkes, Kydd, Sagar & Broadbent, "Upright posture improves affect and fatigue in people with depressive symptoms" (Journal of Behavior Therapy and Experimental Psychiatry, 2017)
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研究 4 · ランダム化比較試験 · Veenstraら(2017)
素朴な疑問
落ち込んだとき、猫背だと立ち直りにくい?
嫌なことがあると、つい背中が丸くなるよね。その姿勢のままだと、気分が戻るのも遅くなるのかな。
調べた人
わざと気分を下げてから、姿勢を変えた
フェーンストラたちは、1つ目の実験で229人の気分を下げるか、そのままにした。そのあと猫背・まっすぐ・指示なしの姿勢にくじで分け、考えを書き出してもらった。2つ目の実験は122人。
結果
猫背のほうが、気分が戻りにくかった
猫背の人は、気分の戻りが小さく、嫌な考えも多かった。気分を下げていない人でも、猫背だと気分が下がった。2つ目の実験では、物事の見方を変える指示があってもなくても、猫背は戻りにくかった。
まだわからないこと
実験室で、少しの間だけの話
実験室で人工的に気分を下げ、短い時間だけ姿勢を変えた結果。ふだんの落ち込みや、長く続く気分の不調で同じことが起きるかはわからない。
出典: Veenstra, Schneider & Koole, "Embodied mood regulation: the impact of body posture on mood recovery, negative thoughts, and mood-congruent recall" (Cognition and Emotion, 2017)
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研究 5 · 実験 · Briñolら(2009)
結論
背筋を伸ばすと自分を信じやすい?
背筋を伸ばして座ると、自分について書いた内容を確信しやすくなります。ただし内容が前向きなら、という条件つきです。姿勢は自分の考えへの確信度に作用します。
研究
どんな研究?
自分の長所または短所を書く際、背筋を伸ばし胸を張る姿勢か、前かがみの姿勢かに分けて、自己評価を比べた実験です。姿勢が自己評価にどう影響するかを検証しました。
結果
分かったこと
姿勢は思考の数や質を変えず、思考への確信度を変えました。自信ある姿勢だと、書いた内容の方向が自己評価により強く反映されました。
出典: Briñol, Petty & Wagner, "Body Posture Effects on Self-Evaluation: A Self-Validation Approach" (European Journal of Social Psychology, 2009)
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研究 6 · 実験 · Finchら(2017)
結論
立って作業すると、成績が上がる?
約30分の作業では、立っても座っても読解や創造性の成績は変わらなかった。ただ、立っているときの方が作業への関心や熱意は高かった。
研究
どんな研究?
カリフォルニア大学ロサンゼルス校などの研究チームが、96人に読解課題と創造性課題を座位と立位の両方で行わせ、成績と気分を比べた。
結果
分かったこと
成績や、課題の難しさ・努力感の評価は座位と立位で差がなかった。一方、立位では関心・熱意・覚醒度が高く、快適さはやや低かった。
出典: Finch, Tomiyama & Ward, "Taking a Stand: The Effects of Standing Desks on Task Performance and Engagement" (International Journal of Environmental Research and Public Health, 2017)
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研究 7 · メタ分析 · Gronauら(2017)
よく聞く説
パワーポーズで、自信がわいてくる?
腰に手を当てて胸を張る「パワーポーズ」。ホルモンが変わるという話は追試で崩れたけど、「力がわく感じ」のほうはどうなんだろう。
調べた人
事前に計画を登録した6つの研究だけで確かめた
2017年、グローナウたちは、やり方を先に登録してから行った6つの研究だけを集め、ベイズ法でまとめた。都合のいい結果だけが世に出る心配を減らすためだ。
わかったこと
「力がある感じ」は強まっていた
広げるポーズをとると「自分には力がある」と感じる効果には、強い証拠があった。ただ、パワーポーズのことを知らなかった人だけに絞ると、証拠は中くらいまで弱まった。
まだわからないこと
感じ方の話で、思い込みも混ざるかも
測ったのは本人が答える「力がある感じ」だけ。知っている人ほど効果が出やすいなら、期待が混ざっている可能性がある。行動やホルモンが変わるかは、この分析からは言えない。
出典: Gronau, Van Erp, Heck, Cesario, Jonas & Wagenmakers, "A Bayesian model-averaged meta-analysis of the power pose effect with informed and default priors: the case of felt power" (Comprehensive Results in Social Psychology, 2017)
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研究 8 · ランダム化比較試験 · Ranehillら(2015)
結論
パワーポーズでホルモンは変わる?
堂々としたポーズでテストステロンが増え、コルチゾールが減るという話は、大規模な追試で再現されませんでした。気分は変わっても体は変わらない、というのが追試の結論です。
研究
どんな研究?
男性102人・女性98人を、強いポーズと弱いポーズにランダムに割り当て。実験者には条件を伏せました。2つのポーズを3分ずつとった後に、ホルモンと3つの行動課題を測りました。
結果
分かったこと
「力強い気分」の自己報告だけは高まりましたが、ホルモン値と3つの行動課題には有意な差がありませんでした。
まだわからないこと
まだわからないこと
元の実験とは、ポーズの時間(1分→3分)や指示の出し方など細かい手順が違っていたんだ。その違いが結果の差を生んだ可能性は残るよ。気分が上がった差も小さめで、実験室で1回ポーズをとった話。毎日続けたらどうなるかはわからない。
出典: Ranehill, Dreber, Johannesson, Leiberg, Sul & Weber, "Assessing the Robustness of Power Posing: No Effect on Hormones and Risk Tolerance in a Large Sample of Men and Women" (Psychological Science, 2015)
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研究 9 · 実験 · Michalakら(2009)
結論
気分が沈むと歩き方にも表れる?
落ち込んだ気分のときの歩き方には、歩く速さが遅く、腕の振りが小さく、猫背ぎみになるという特徴がある。気分と体の動きは結びついている。
研究
どんな研究?
ドイツの研究チームが、うつ病の入院患者14人と健康な対照群の歩き方を比較し、さらに大学生23人に悲しい曲か明るい曲で気分を誘導して歩き方を測った。
結果
分かったこと
うつ状態や悲しい気分の人は、歩行速度、腕の振り、頭の上下動が小さく、上半身の横揺れと猫背が大きかった。歩き方が気分を変えるかは別の検証が必要。
出典: Michalak, Troje, Fischer, Vollmar, Heidenreich & Schulte, "Embodiment of Sadness and Depression: Gait Patterns Associated With Dysphoric Mood" (Psychosomatic Medicine, 2009)
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